But Beautiful/後藤輝夫&佐津間純のご紹介。

 

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亀吉レコードよりリリースの、But Beautiful/後藤輝夫&佐津間純
(2012/11月リリース)ライナーノーツのご紹介。

日増しに深まりゆく秋の午後、窓越しに眺める木々の黄葉が折からの冷たい雨に打たれている。部屋には珈琲の香りとともに、スタンダードナンバーの心地良いメロディーが静かに漂う。慌ただしく過ぎ去る日々を暮らす者が「生きている喜び」を実感するのは、こんなつかの間のひとときだ。本作”But Beautiful”は、全11曲が後藤輝夫のテナーサックスと佐津間純のギターのみによるデュオという、たいへん珍しいアルバムである。本アルバムでは後藤の情感豊かなメロディーラインに、佐津間のギターが時に軽快にアクセントをつけ、時には主旋律を奏でるという具合に見事なコラボレーションを見せ、聴く者を飽きさせない。ここで演奏される曲はいずれもよく知られたスタンダードナンバーであるが、中にはよくぞ取り上げてくれたと思う曲もある。”Moonlight In Vermont”と”The Things We Did Last Summer”の2曲がそれだ。ヴァーモントの月は映画ホワイトクリスマスの印象的なシーンでも歌われるが、艶のある歌声のマーガレットホワイティングの名唱も捨てがたい。ここではギターによるイントロからサックスのクロージングまでさながらヴァーモントの丘の上で月明かりを浴びているような気持ちにさせてくれる。後者は英国出身、マリアンマクパートランドのピアノトリオによる気品高くクールな演奏がお勧めだが、可憐なバラードであるこの小品を後藤のテナーは美しい音色を響かせ、まさに「珠玉のような」出来栄えに仕上げている。概してジャズメンにありがちな「自己のプレイに陶酔したような演奏」や「テクニックばかりを見せつける味気ない演奏」の両極から程よい距離に身を置いた二人の掛け合いは、スタンダードを愛する者にとって実に好ましい。本アルバム中、白眉ともいえるのは、タイトル曲にもなっている”But Beautiful”と”My one and only love”であろう。いずれの曲も、スタンダードはこう演奏してほしいという聴き手に気持をよく理解した心配りが感じられる。

それでありながら、二人の個性は遺憾なく主張されており、その点、イージーリスニングとは一線を画す。そのあたりのさじ加減は絶妙という他はない。後藤のサックスには幾多のライブで鍛え上げられた確かな存在感が伝わってくる。一方、佐津間の抑制の利いたギターにはどこかジムホールの音色を想い起こさせるものがある。たとえばジムホールがビルエヴァンスと共演したVerveのアルバム”Intermodulation”を聴いてそう思う。本作中、1曲だけ忍ばされたラテンの名曲”Without you”もこのアルバムにしっとりとした彩りを添えている。そうしてギターの美しいヴァースから入るブルージーな1曲”Little Girl Blueが一枚のアルバムを静かにしめくくる。テナーの歌うようなフレージングが懐かしい1枚のアルバムを思い出させてくれた。ブレンダリーのブルース曲集”Reflections”。少女のゆれ動くブルーなな心情を若き日のブレンダは余すところなく表現していて愛らしい。

本アルバムは都内にある小さなスタジオ(亀吉音楽堂)で制作されているが、録音装置、録音技術ともたいへん優れており、細部の音質までこだわりを持ち、ジャケットデザインも含めていわば手作りともいえる温かみが感じられることも付け加えておこう。(松本光正 2012年11月30日)

 

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There is one comment on But Beautiful/後藤輝夫&佐津間純のご紹介。

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    とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。

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