★7/30 Amazon・Itunes・Eonkyo(ハイレゾ)On Sale ★8/12 CD SHOP OnSale 流通(問)ディスクユニオンdistribution@diskunion.co.jp
【アルバム紹介】 良質の国産ジャズレーベルとして定評のある亀吉レコードの新譜は「しなやかに優しく心にしみる鈴木輪ヴォーカルとピアノトリオの極上サウンド」Desafinado・ディサフィナ―ドだ。オーディオ雑誌の評論家が選ぶ優秀推薦版に選ばれた鈴木輪のスロージャズ3部作と言えば、2011年リリースの”My Reverie・マイレヴァリー、“2013年リリースの”Blue Velvet・ブルーベルベット”、2015年リリースの”I’ll close my eyes”瞳をとじて”。それと対照的に、ソウルフルなスタイリッシュバンドサウンド2016年リリースの”Love Love Love RE-MIXに続くまさに4年ぶりのアルバム。本作の特徴は夏らしいボサノバ曲がが多い。それとLatin曲2曲にジャズスタンダードナンバーを加えた全14曲。選曲も良く、様々な鈴木輪のヴォーカルを楽しむことが出来る。アルバム1曲目。イントロからワクワクするアップテンポの”Triste”や7曲目”No more blues”(Chega de Saudade)はシンプルな歌い方の中に鈴木のセンスが光る。そして、5曲目”小舟”というタイトルで馴染み深いが、原曲のタイトルは”O Barquinho”。英語タイトルは”My little boat”。鈴木の歌う”小舟”が涼し気な夏の風を運んでくる。英語詞でこの曲を歌う歌手はフランクシナトラぐらいだろうか?鈴木は「英語だと(ポルトガル語より)情景が浮かびやすいからボサノバは英語で歌います。」と言う。アルバムタイトル曲になった2曲目” Desafinado”は鈴木の声、雰囲気にとてもマッチする曲だ。しなやかに優しい歌がじわじわと迫る。セルジオメンデスの楽曲、3曲目”So many stars”は特にいい。しみる曲だ。この曲や12曲目”My one and only love”のような曲は音域が広く難しい曲だが鈴木はしっかりとした情感をたたえている。4曲目”Cheek to cheekはスピード感を持って小粋にスウィング。6曲目”I can’t give you anything but love、13曲目”On the sunny side of the streetはストレートな歌唱、オリジナルメロディーを大事にしながら気の利いたフェイクで軽くスウィング。8曲目”Dream a little dream of meのエンディングは鈴木の口笛入りだ。「歌よりこっちの方がよくない?」と言って、遊びで口笛を吹いてみたら「それ、いいんじゃない?」となり採用されたらしい。11曲目”I’ve got the world on a string。こういうSlowly Swingは鈴木の一番好きなテンポらしい。ラウンジでグラスを傾けながらゆったりと聴いてみたいものだ。そして、ラテン曲が2曲は10曲目”Besame Mucho”と9曲目”Tango Lullaby”。”Besame Mucho”は英語詞ヴァージョン。歌い出し「♪ベサメー、べサメ―ムーチョー♪」の鈴木の歌に息をのむ。もう1曲のLatin曲、Larry Wayne Clarkの楽曲”Tango Lullaby”はHalie Lorenの歌唱が有名。鈴木輪のタンゴララバイもなかなか良い。ピアノトリオの演奏も1発録りと思えない好演奏だ。全曲、亀吉音楽堂、上田が録音。全曲丁寧にミックスされ、鈴木輪の歌の魅力が十分に伝わってくる仕上がりとなっている。14曲目”Whatch what happens”「何が起こるか見て!」ミシェルルグランの曲をこのアルバムのラストに持ってきた。これから、鈴木に何が起こるのか?注目するとしよう。
ディサフィナ―ドが、オーディオアクセサリー誌・2020 秋号178「14人の評論家が選ぶ優秀盤オーディオグレード2020 in Autumn」に選ばれました。
She’ll Surely Touch You If You Only Have A Sensor In Your Heart.
鈴木輪の最新アルバム“Desafinado”は、あるスタイルの女性ヴォーカル好きには好意的に受け入れられるだろうと思う。大手レコード会社やマスメディアが好んで取り上げたがる日本のジャズヴォーカルに、もの足りなさや何かちがうという感じをお持ちの方は少なからずいると思う。私もそのひとりだ。日頃は1950~60年代のLPレコードでしか女性ヴォーカルを聴かない私だが、ずっと聴き続けているシンガーが一人だけいる。12年前、たまたま通りかかったpiano loungeで知った鈴木輪(当時は改名前の鈴木リエ)の歌だけは、聴くに値すると思っている。 海外のオリジナルレコードを収集し始めて40年近くになるが、名盤だとかよく売れたという評判にとらわれず、自分の好みだけを基準とした。初期の頃は、マイナーレーベルからリリースされたrareな貴重盤に目が向きがちだった。しかし苦労して探し求めた高価なレコードも、大半は手放して今はない。結局、手元に残したのは、誰もがよく知るポピュラーな歌手のものが多い。たとえば、ダイナ・ショア、ペギー・リー、マーガレット・ホワイティング、ジュリー・ロンドンといった人たち。ややマイナーなところで、ヘレン・オコンネル、キティ・カレン、それにブロッサム・ディアリー、キャシー・カーなど。そうなったのは、彼女たちの歌は何度聴き返しても決して飽きるということがないし、必ずまた聴きたいという気持ちが湧き上がってくるという単純な理由からだ。彼女たちの歌には、際立つ実力やパーソナリティーが感じられるのはもちろんだが、ある一つの共通した点がある。私が女性ヴォーカルに求めるものはただ一つ、その声に聴き入ったとき、何ともいえない心地良さが心いっぱいに拡がるか、それに尽きる。そのような体験を初めてしたのはもうずい分昔、ペドロ&カプリシャス初代ヴォーカリスト、前野曜子の声がラジオから流れたときのことだ。「別れの朝」のサビの伸びやかな歌声-“言わないで なぐさめは 涙をさそうから 触れないで この指に 心が乱れるから”には心底しびれた。Her voice touched meというしかない。鈴木のアルバム“Desafinado”には、そんな想いを満たしてくれる曲がいくつかある。“この1曲”というなら、迷わず12曲目“My one and only love”をあげる。 この曲は出だしの数小節が生命線だと思っていて、とりわけヴォーカルではその表現の仕方で良し悪しが決まる。鈴木はそこを“彼女ならでは”の節回しで歌いあげていて、期待をうらぎらない。この出だしを聴いて、特に感じるものがないというなら、私とは感性を異にするということだろう。好みは人それぞれだ。自分にぴったり合うアーティストを見つければよい。実はこの曲には忘れがたい思い出がある。2008年から丸4年間、毎日曜の夜、鈴木のピアノの弾き語りを聴くのを楽しみとしていたのだが、彼女はいつも私の幅広いリクエストに応えてくれた。多くはスタンダードで私の期待どうりのムードで歌ってくれたが、ただ1つリクエストがかなわなかった曲がある。それが、“My one and only love”。 彼女いわく、「ピアノの調音階が苦手なkeyなので」ということだった。その積年の願いが今回、このアルバムでやっとかなった。彼女なら、こう歌ってくれるだろうと期待していた以上の歌唱で、この1曲でこのアルバムは手放せないものとなった。 ドリス・デイがアンドレ・プレヴィンのピアノソロで歌った“Duo”アルバムでの歌唱に引けをとらないと思う。 アルバムに収録されているのは全14曲、全曲通しで聞くと1時間近くかかる。私は女性ヴォーカルをBGMのように聞き流すことはしないので、何曲かに分けて聴く。1日の疲れをいやす夜に聴きたいのは、スタンダードだ。“So many stars”、“I can’t give you anything but love”、それに“Dream a little dream of me”がいい。ロックグラスに注いだモルトウィスキーが、ゆっくり氷に溶けてゆくように静かに時間が流れる。“On the sunny side of the street”を歌う鈴木の声は、私にヘレン・フォレストの名盤やペギー・リーの10インチで聴ける名唱を思い出させてくれる。 そしてまだ暑さが残る気だるい昼下がりには、ブラジリアンサウンドが合う。カルロス・ジョビンの1曲“Triste”や“No more blues”もいいし、“Besame Mucho”もわるくない。かたわらにフローズンダイキリでもあれば、最高だ。ふと、晩年をキューバに近いカリブの島で過ごした、ヘミングウェイが愛したフローズンダイキリのことなどを思い浮かべる。タイトルナンバー“Desafinado”(Slightly out of tune)はボサノヴァサウンドがヒットした1963年に多くのシンガーがアルバムに収めている。ペリー・コモ、ジュリー・ロンドンが残しレコードは、今聴いても古さを感じさせない。鈴木の歌もそうなってほしい。 バックのピアノトリオは曲によって少しづつメンバーが入れ替わるが、絶えずヴォーカルに寄り添って支えており、好ましい。一つだけ注文をつければ、Slightly Latinの曲はアコースティックギターの響きが加われば、さらにムードが高まっただろうと思う。 最後に付言として、鈴木のアルバムは録音スタジオの技術の高さに定評があり、配信で外出先などで聴くにはもったいない作品だ。高性能のオーディオ装置をお持ちの方は、音質のすばらしさを味わうのも楽しみの一つではないだろうか?
★鈴木による曲解説ブログ(曲名クリック♪) ① Triste/トリステ 鈴木輪(vocal/cho)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ②Desafinado/ディサフィナ―ド 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ③So many stars/ソーメニースターズ 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ④Cheek to cheek/チークトゥーチーク 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑤My little boat/マイリトルボート(小舟) 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ⑥I can’t give you anything but love/捧ぐるは愛のみ 鈴木輪(vocal)山崎洋一(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑦No more blues /ノーモアブルース 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ⑧Dream a little dream of me/ドリームアリトルドリームオブミー 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑨Tango lullaby/タンゴララバイ 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑩Besame Mucho/ベサメムーチョ 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ⑪I’ve got the world on a string/思いのままに 鈴木輪(vocal)山崎洋一(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑫My one and only love/マイワンアンドオンリーラブ 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑬On the sunny side of the street/明るい表通りで 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)林正男(bass)宇山満隆(drums) ⑭Watch what happens/ウォッチワットハプンズ 鈴木輪(vocal)続木徹(piano)上田隆志(bass)金子正則(drums) ★Staff 【バンド録音】 2011年~2018年 【ヴォーカル録音】2019年~2020年 【ミックス,マスタリング】 2020年 【レコーディングスタジオ】亀吉音楽堂 【レコーディングエンジニア】上田隆志 【カヴァージャケット写真】 山村隆彦 【ヘアメイク】大森ユキ*撮影 亀吉音楽堂 【ビーチ写真】 石丸智仁 【ヘアメイク】マユミアヴィス*撮影オアフ島ノースショア 【グラフィックデザイン】鈴木輪*亀吉レコード
鈴木輪の「Love Love Love RE-MIX版」高音質CD、ハイレゾで復活!ロングヴァージョン入りで再リリース!ダニーハサウェイ、ビルウィザース、スティービーワンダーetcの70年代ソウルの名曲やスタンダードジャズをオシャレにカヴァー エレガントなヴェルベットヴォイスとソウルフルなスタイリッシュバンドサウンドが見事に融合。選曲、アレンジの良さにも鈴木輪とこのバンドのセンスが感じられるアルバム。
The Walker’s (2016Vol.46)レビュー掲載
12 年の時を超えて~鈴木輪 meets 鈴木リエ 亀吉レコードの原点となったアルバム『ラブラブラブ』は、ジャズ・シンガー鈴木輪が鈴木リエとして活動していた2004年に発表。2010年鈴木輪に改名以降、3枚のアルバムを発表しているが、今回は隠れ名盤『ラブラブラブ』をリミックスし、素敵に復活させている。タイトル曲のダニー・ハサウェイの名曲やマイルスもカヴァーしたシンディー・ローパーの「Time After Time」、スティーヴィー・ワンダーの「I wish」「Creepin’」等、選曲も魅力。実力派ミュージシャンによるバンド”スピリチュアルライフ”の好演も素晴らしい。「12年前の自分の歌声にちょっと照れる」と語る鈴木輪のエレガントなヴェルベットヴォイスの原点に触れることが出来るオシャレな癒しのアルバム。(The Walker’s 加瀬正之)
★彼女は常に原曲の持つ美しさを大切にしているように思う。その姿勢が、無用なフェイクや過度の感情移入を避けた自然で素直な歌唱へとつながる。それは一種の気品というべきものであって、1940年代から50年代の女性歌手達がもっとも輝いていた時代に持っていたものに通ずる。現代においては希少なものと思う。 楽曲について→1曲目の”Again“を聴いてみよう。心地よく響き渡るアコースティックギターの調べに乗って、しっとりとこの名曲を聴かせてくれる。同時にこの1曲からアルバム全体の趣向もうかがえる。そしてアルバムの選曲のセンスの良さもあげておきたい。スモールコンボをバックにスローバラードと、時に軽快なミディアムテンポの曲に程良く歌い分けられている。前者に代表されるのが“Born to be blue”、”Every time we say good bye”(ハーモニカソロが美しい)であり、後者に属するのが“Blue skies”(ウッドベースがスウィング感を盛り上げる)、“Too close for comfort”である。 テナーサックスのイントロで始まる“Lover man”、ギターとコンガに導かれて歌われる“So in love”の2曲は 特に素晴らしい出来で深い余韻を残す。 曲に戻ろう。“Que sera sera”はいうまでもなくドリス・デイのヒット曲だが、ウェールズ出身のポップシンガー、メリーホプキンの歌も忘れがたい。 この歌を鈴木も明るくはぎれよく歌っている。ドリス・デイでおなじみのもう1曲“Tea for two”はここではギターだけをバックにしみじみと歌われる。 特にヴァースからの入りが抜群にいい。 「二人でお茶を」という曲だが、「1人でスコッチを片手に」聴きたい。 “My Reverie”は馴染みの薄い曲かもしれないが、ハリージェイムズ楽団のバンドシンガーでもあったヘレンフォレストによる可憐な歌声が残されている。 ここでは、フルートの音色が鈴木の声に優しく寄り添う。 “Red sails in the sunset”。私がこの曲を初めて聴いたペリー・コモのレコード、そのライナーノートには「音に名高き名唱」とあった。あれから早や45年。 鈴木のヴァージョンはゆったりとコンガのリズムがたゆたい、夕暮れの浜辺の情景を鮮やかに映し出して秀逸。(松本光正:ライナーノーツより)
収録曲 Again Blue skies My reverie Born to be blue Lover man, Red sails in the sunset Tea for two Que sera sera So in love Too close for comfort Everytime we say goo-bye
筆者が時折立ち寄るBarでは鈴木輪の【My Reverie】のCDがかかる。 夏の暑い夜などキリッと冷たいカクテル、ピーチブロッサムを口にしながら「So in love」にじっと耳をかたむける。何と心豊かなひとときであろうか。 その前作【My Reverie】から2年余りを経て、その続編ともいえるアルバム【Blue Velvet】がリリースされた。 今回のアルバムでも、日本ではスタンダードナンバーとよばれるAmerican Song Book中心のナンバーが多く選曲されている。前作同様、鈴木の伸びやかなヴォーカルがときに軽快に、ときにしっとりとした情感をたたえて流れてくる。 本作の特徴をあげるとすれば、オルガンの入った曲が何曲かあるが、前作同様サックスとギター中心のサウンド。全曲で控え目ながら個性あふれるフレーズを奏でるギターではないか。 実は本アルバムのリリース前、このアルバムを録音したスタジオ(亀吉音楽堂)で全曲を試聴させてもらった。 高音質機材による録音であるとは聞いていたが、実際に聴いてみると、その音は想像以上であった。電源にまでこだわったオーディオ装置、Altecのスピーカーで聴くと、ヴォーカルはまるで目の前で歌われているようだし、サックス、ベース、ギターの音もそれぞれ はっきりと聴きとれる。
曲についてふれよう。1曲目の「Moonlight in Vermont」。昔から筆者の好きな曲で、マーガレット・ホワイティングの名唱もキャピタル盤に残されているが、鈴木のヴォーカルも期待にたがわず美しい。あと2曲好きな曲をあげれば、「Here’s that rainy day」と「Crazy he calls me」。特に前者は本アルバム中、ベストの歌唱といってもいいのではないか?アルバムタイトルにもなった「Blue Velvet」を筆者はよく鈴木のピアノ弾き語りで聴いた。バンドで歌うヴァージョンも洗練された見事な表現だ。パティペイジでおなじみの「Tennessee Walz」は、4拍子でブルース風のアレンジがなされている。同じくやや意表をつかれるのは、アップテンポで歌われる「It might as well be spring」でキレのいいソプラノサックスがpuppet on a stringを視覚化させてくれる。1960年代の映画音楽が1曲とり上げられている。主演のアヌーク・エーメを一躍日本で有名にした「A man and a woman」。サウンドトラック盤、インストラメンタルの演奏が流れることが多いが、英語詞のヴォーカルヴァージョンは非常にめずらしい。