【楽曲について】(松本光正:ライナーノーツより)
1曲目の”Again“を聴いてみよう。
心地よく響き渡るアコースティックギターの調べに乗って、しっとりとこの名曲を聴かせてくれる。同時にこの1曲からアルバム全体の趣向もうかがえる。そしてアルバムの選曲のセンスの良さもあげておきたい。スモールコンボをバックにスローバラードと、時に軽快なミディアムテンポの曲に程良く歌い分けられている。
前者に代表されるのが”Born to be blue“、”Every time we say good bye“(ハーモニカソロが美しい)であり、後者に属するのが”Blue skies“(ウッドベースがスウィング感を盛り上げる)、”Too close for comfort“である。
テナーサックスのイントロで始まる”Lover man“、ギターとコンガに導かれて歌われる”So in love“の2曲は 特に素晴らしい出来で深い余韻を残す。
曲に戻ろう。
“Que sera sera“はいうまでもなくドリス・デイのヒット曲だが、ウェールズ出身のポップシンガー、メリーホプキンの歌も忘れがたい。
この歌を鈴木も明るくはぎれよく歌っている。ドリス・デイでおなじみのもう1曲”Tea for two“はここではギターだけをバックにしみじみと歌われる。 特にヴァースからの入りが抜群にいい。
「二人でお茶を」という曲だが、「1人でスコッチを片手に」聴きたい。
“My Reverie“は馴染みの薄い曲かもしれないが、ハリージェイムズ楽団のバンドシンガーでもあったヘレンフォレストによる可憐な歌声が残されている。
ここでは、フルートの音色が鈴木の声に優しく寄り添う。 “Red sails in the sunset“。私がこの曲を初めて聴いたペリー・コモのレコード、そのライナーノートには「音に名高き名唱」とあった。あれから早や45年。 鈴木のヴァージョンはゆったりとコンガのリズムがたゆたい、夕暮れの浜辺の情景を鮮やかに映し出して秀逸。(松本光正:ライナーノーツより)